システム思考の世界へ ―複雑化する時代で考え続けるソフトウェア技術者のためにを読んだ。
ソフトウェア技術者がシステム思考をどのように自分の仕事に取り入れていくか、という視点で書かれた本。
システム思考そのものの解説書というよりは、複雑化するソフトウェア・組織・社会を相手にする技術者が、要素還元的な見方だけではなく全体の構造や相互作用に目を向けるための入り口として書かれているという印象を受けた。
ストックとフロー、フィードバックループ、遅延、レバレッジポイントといったシステム思考の基本的な道具立てが、ソフトウェア開発や組織で起きる現象と紐づけながら紹介されている。
特定のフレームワークを覚えるというよりは、「目の前の事象を構造として捉える」ための視点を養うための本という位置付けで読むのが良さそう。
印象に残った点は次の3つ。
- 線形的な因果関係ではなく、循環的な構造で物事を捉える視点が繰り返し提示されている
- バグや障害、組織の機能不全といった「うまくいかない事象」を、個別の責任ではなくシステムの構造から考える発想が紹介されている
- 短期的に効きそうな介入が長期的には逆効果になりうる、いわゆるレバレッジポイントの選び方の話が興味深かった
具体的な手順書というよりは、考え方のOSを揃えるための本という色が強いので、アーキテクトやEM・テックリードのように「個別の事象の裏側にある構造」を扱う立場の人と相性が良いと感じた。
組織やシステムの問題を扱うときに「症状ではなく構造を見る」という姿勢を改めて意識させられる一冊だった。